非IT系企業のユーザーさんがパソコンがらみで困っていること

今、私は仕事で、ペーパーレス化のためのシステムを作っている。
ユーザーさんの企業では、いまだに紙の帳票で処理しているらしいのだが、
このシステムが導入されたら、帳票類は全部システムの中で流通するようになる。


そのシステムの導入先となるユーザーさんの企業が、偶然だが母親が働いている会社だった。
母親に、今ペーパーレス化のシステム作ってるよ、という話をした。


「えっ、そんなもん作ったって、私らみたいなおばちゃんたちはうまく使えないでしょー!」


そうなのか。
でも、いちいち紙の書類を廻さなくてもいいから楽にはなるんじゃない?と聞いてみた。


「んー、ペーパーレスっていったって、結局、みんないちいち紙に印刷して、使うと思うよー」


うーむ。そうなのかー。
私の母親は営業の仕事をしている。
営業にとって、パソコンは必須の道具というわけではない。
そのため、昔から営業をやってきた60歳近い人なんかは、最近になって一人一台付与された、
パソコンというものに四苦八苦しているらしい。


うちの母親は、その営業部の中では、わりとパソコンの操作ができる方らしい。
なので、色々な人からパソコン操作が分からないことがあると、たびたび教えてくれと言われるのだそうだ。


「うちの会社のリーダーさんは、昔からやってきた人なんだけど、パソコンの仕組みはほとんど分かってなくて。
メールで送られてきた資料があったんだけど、それに入力しただけでは駄目で、それをもう一回添付して、
送り返さないと相手は入力した資料が見れない、ってことが分からないんだわ。」


一般の会社ではそういうものなのか。
自分はソフト会社で勤めているから、パソコン操作することを、お箸でご飯食べるのと同じぐらい
自然にできる人しか周りに居ないので、一般企業ではそんなことで困っているとは思ってもみなかった。


「返信しないと部長は見れないですよといっても、ん?入力したんだから見れるんじゃない?とか言ってて。
まあ、共有に置いてあるファイルに記入してくださいと、メールが来る場合もあるから、それだと
記入しただけで、相手が見れるようになるんだよね。だからややこしい。」


うーむ、確かにそれはちょっと難しい。
記入したファイルを返信しなくてはいけないのか、それとも記入しただけでOKなのかを
判断するためには、そのファイルがどこに置いてあるのかということを理解しないといけない。


60歳近いおばちゃんに、これはメールの添付を直接開いて保存したから、
そのファイルは自分のパソコンのテンポラリフォルダに保存されているだけなので、
相手は見れないから、それを添付しなおして返信しないといけないよとか、
メールにはファイルパスだけ書いてあって、ファイルが共有サーバに置いてあるなら、
それは記入したらそのままでいいよとか、
そんなのを教えるのはかなり無理がありそうである。


「でも、その人はパソコンは使えないけど、営業の成績は凄くて。」


なるほど、本業とパソコンは関係ないから、パソコンが使えないからって、
仕事が出来ない人というわけではないわけか。


「あとね、共有に置いてたファイルが丸ごとなくなっちゃうことがたびたびあるんだよ!
あれはなんでなのかねえー?」


えっ、共有のファイルが消える?そんなことがあるのか。
いやまてよ、パソコン操作に慣れてない人だらけの会社で、みんなで共有ファイルサーバを使わせたら
どうなるか考えれば、なんとなく想像できる。
誰かが間違えて、ファイルをコピーしたつもりで、ファイルをどっかに移動しちゃったんだろう。


Windowsだと、ファイルを共有フォルダから自分のパソコンのフォルダへドラックすると、それはコピーになる。
しかし、共有ディスク内でファイルをドラックすると、それは移動になってしまう。


考えてみると、ドラックというのはけっこう難しい操作だ。
ファイルの上でマウスのボタンを押して、そのまま押したまま目的地までもっていき、ボタンを離す必要がある。
マウスを使い慣れない人が、
途中でボタンを離してしまって、
その放した場所が共有ディスクのどこか違うフォルダだったら。
あれファイルが消えてしまった!ということになりそうだ。


「それでも、私はなにもやってないよ!ってみんな言うんだよ。
そんな人たちに、パソコンの操作を教えるのは、ほんとに疲れるんだよー。
私だってパソコンに詳しいわけじゃないのに。」


自分が作っているペーパーレス化のシステムを導入して、
メールの添付ファイルとか共有ファイルの問題が
うまく解決されればいいのだが、
私のようなシステム屋の目線と、ユーザーさんの目線はだいぶ異なるのだなと、
改めて思った。