僕はプログラマ
黒い画面に浮かび上がる
緑色の文字
8bitのコンピュータ
僕は
3.58メガヘルツで駆動させるMPUに
32KByteのメインメモリに
CRTが放つ輝きに
無限の可能性を感じた
LIST
流れていく文字の洪水
僕の作ったプログラム
最初から
最後まで
全部打ち込んだ
全部頭に入ってる
RUN
思い通りに動き出す
8bitのコンピュータと
CRTの
僕の作った新しい世界
小さな世界
でもきっと
いつか
ほんとの世界を変える
プログラムを作る
僕の作ったプログラムで
もっと
楽で
便利な
世の中にしたい
そう思った
僕は
プログラミングを学び続け
大人になり
プログラマになった
プログラミングでは
誰にも負けない
そう信じた
僕が社会人になったとき
あらゆるものがシステム化され
ネットワークで繋がり
コンピュータは
人の生活の中に
溶けていた
僕が
プログラムの力で
便利にしたいと願った世界
もう
あらゆるものはコンピュータ化され尽くされ
ソフトは作り尽くされた
プログラマは
必要なくなっていった
僕の
力を生かす場所は
どこにも無かった
仕事が無くなり
会社を辞めた
僕は
この世界を
もう一度
作り直すことにした
コンピュータウイルス
全てのシステムを壊して
僕がまた
輝ける
世界を作る
ネットワークに放たれた
僕のウイルス
完璧なウイルス
ネットワークの中で
パケットが嵐のように流れ
たくさんのシステムが停止した
でも
すぐに騒動は終焉に向かった
僕は逮捕された
完璧だと思っていた
ウイルスのプログラム
広がり変わり続けるインターネット上では
完璧なものなど無かった
何億ものコンピュータが結びついた
インターネットの世界は
子供のころの8bitコンピュータのように
全てを知るには複雑すぎた
努力すれば報われるなど嘘だ
と
檻の中で叫んだ